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8月22日の日本の昔話
玄蕃丞狐(げんばのじょうぎつね)
長野県の民話 → 長野県情報
むかしむかし、桔梗ヶ原(ききょうがはら)という所に、玄蕃丞狐(げんばのじょうぎつね)といういたずらギツネがいました。
村の男が道を歩いていると、急に見た事もないような川に出ました。
「おや? こんな川があったかな?」
変に思いながらも着物のすそをめくって川を渡り始めたところ、いくら渡っても渡っても渡り切れず、それどころか川は深くなっていくばかりです。
それでもがんばって川を渡っていると、後ろから、
「ケンケンケン」
と、キツネの笑い声がして、はっと気がついてみるとそこは川ではなく田んぼのまん中だったそうです。
ある日の事、さんぽから帰ってきた村の庄屋(しょうや)が自分の家の前に人だかりが出来ているので何事かと思って見てみると、一人のきれいな娘さんが門のところに倒れているではありませんか。
庄屋はびっくりして、すぐに人を呼んで娘を家に入れてやりました。
そして布団に寝かせて看病したところ、娘はようやく気がついて、
「お世話をかけて、申し訳ございません」
と、まるで鈴をふるような声で言うのです。
「どうして、あんなところに倒れていたんだね?」
庄屋が尋ねてみると、娘は恥ずかしそうにうつむいて、
「人を探して旅をしていたのですが、お腹がへって倒れてしまったのです」
と、言うのです。
気の毒に思った庄屋は、さっそくごちそう作らせて娘を手厚くもてなしました。
さて次の朝、娘は庄屋の前に手をつくと、ていねいに礼を言って、
「大変お世話になりました。これは、お礼のしるしです」
と、細いひもを通した銭を置いて出ていったのです。
ところが後で、娘のいた部屋をのぞいた庄屋はびっくり。
部屋中に昨日のご飯のおかずが散らかっていて、キツネの好物の天ぷらや魚しか食べていないのです。
「まるで、キツネが食い散らかしたようだな。・・・もしや!」
庄屋は、娘がお礼に置いていった銭を見ました。
するとそれは、木の葉をひもに通したものではありませんか。
「やられた! 玄蕃丞狐(げんばのじょうぎつね)だ」
庄屋はすぐさま娘を追って出たものの、もう娘の姿はどこにも見あたりませんでした。
けれども、さすがの玄蕃丞狐(げんばのじょうぎつね)も親切にしてくれた庄屋をだましたのは気まずかったのか、それからというもの相変わらず人を化かしはしたものの、庄屋のところにだけは現れなかったそうです。
おしまい
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