福娘童話集 > きょうの百物語 福娘童話集 きょうの百物語 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
     11月21日の豆知識

366日への旅
きょうの記念日
フライドチキンの日
きょうの誕生花
花櫚(かりん)
きょうの誕生日・出来事
1967年 古賀稔彦 (柔道)
  11月21日の童話・昔話

福娘童話集
きょうの日本昔話
石のいも
きょうの世界昔話
ナシ売りと仙人
きょうの日本民話
和尚の夜遊び
きょうのイソップ童話
キツネと大きなヘビ
きょうの江戸小話
おカメの嫁入り
きょうの百物語
重箱お化け
 


福娘童話集 > きょうの百物語 > 11月の百物語 >重箱お化け

11月21日の百物語

重箱おばけ

重箱お化け

日本語 ・日本語&中国語

 むかしむかし、ある町のはずれに法華坂(ほっけざか)という急な坂があり、その坂の上と下に一軒ずつ茶店がありました。
 旅人がよく使う坂ですが、その坂に重箱(じゅうばこ→食物を盛る箱形の容器で、2重・3重・5重に積み重ねられるようにしたもの)の様な顔をした化け物が現れ、しゃべる時に重箱がパカパカと開くとのうわさが広まりました。
 町の人たちはその化け物を『重箱お化け』と呼んで、怖がっています。

 ある日、町の人から重箱お化けの話を聞いた侍が、
「重箱の化け物など、拙者(せっしゃ)が退治してくれよう」
と、法華坂に行きました。
 侍は腰の刀に手を掛けながら、今出るか、今出るかと、用心深く坂を登りましたが、坂を登りきっても何も出ません。
「ふん、拙者が怖くて、出て来られんのじゃろう。・・・やい、重箱の化け物め! 出るなら出て来い!」
 侍は怒鳴りましたが、やっぱり重箱お化けは出てきません。
「けっ、つまらん!」
 侍は上の茶店に行くと、縁台(えんだい→木・竹などで作り、庭などに置いて夕涼みなどに用いる、細長い腰かけ台)に腰を下ろしてわらじのひもをしめなおしながら言いました。
「おい、おかみさん。おかみさん」
「はーい」
「おかみさん、何か温かい物を食べさせてくれんか」
「はい、はーい」
 茶店のおかみさんは、向こうをむいたまま返事をしました。
 侍は近くにあった茶わんに自分でお茶を入れて、お茶を飲みながらたずねました。
「おかみさん。ここらに重箱の化け物が出ると聞いたが、今でも出るかな?」
「はい。重箱お化けですね。時々出ますよ」
「ほう、出るかね。そいつは、お目にかかりたいもんだ」
 すると、おかみさんは後ろ向きのまま侍に近づいて、
「いいですよ。重箱お化けに会わせましょう」
と、いきなりクルリと、侍の方を向きました。
 そのおかみさんの顔が大きな重箱の様に、まっ四角で、顔には目も鼻も口もありません。
 そして口の辺りがパカッと開いて、
「こんなもんです。ベーッ」
と、真っ赤な長い舌でアカンベーをしました。
「うわーっ!!」
 びっくりした侍は退治をするどころか逃げ出すのが精一杯で、茶店を飛び出すと転がる様に坂をかけおりて行きました。
 そして坂の下にある茶店に飛び込むと、ハアーハアーと息を切らせて柱につかまりながら、そばの縁台に腰を下ろしました。
 よっぽど怖かったのか、ひざがガクガクと震えています。
 やがて深呼吸をして落ち着きを取り戻すと、侍は茶店で働いている女の人に声をかけました。
「たった今、重箱の化け物を見てきたぞ! いやはや、重箱の化け物とは、恐ろしい顔であったわ」
「重箱お化けですね」
「ああ、その重箱の化け物だ。しかしお前さん、あんなに恐ろしい重箱の化け物が出るこんな所で働いて、恐ろしくはないのかね?」
「いいえ、ちっとも」
 茶店の女は、振り向きもせずに答えました。
「そうかい。だかそれは、重箱の化け物を見た事がないからだ。あれを見れば誰だって」
「あら、知っていますよ」
 そう言って茶店の女は、くるりとこちらを向いて言いました。
「だってあたしも、『重箱お化け』ですから。ベーッ」
「ギャアアーー!! 重箱の化け物だーーー!!!」
 侍は飛び上がるとすごいはやさで町へ逃げ帰り、法華坂には二度と近寄らなかったそうです。

おしまい

前のページへ戻る


きょうの百物語
ミニカレンダー
<<  11月  >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
福娘のサイト
366日への旅
毎日の記念日・誕生花 ・有名人の誕生日と性格判断
福娘童話集
世界と日本の童話と昔話
女の子応援サイト -さくら-
誕生日占い、お仕事紹介、おまじない、など
子どもの病気相談所
病気検索と対応方法、症状から検索するWEB問診
世界60秒巡り
国旗国歌や世界遺産など、世界の国々の豆知識