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8月4日の日本の昔話
百物語(百物語から一年目)
むかしむかし、ある村の寺に集まった若者たちが、百物語を始めました。
本堂には百本のろうそくが立てられ、怪談を語り終えた者から順番に一本ずつろうそくの灯を消していき、最後の百話が終わる頃には夜もふけていました。
最後まで寺に残っていた庄屋の息子と刀屋の息子は、同じく最後の話を語った小坊主のすすめで、そのまま寺の本堂に泊まる事にしました。
三人は仲良く並んで横になると眠りにつきましたが、庄屋の息子だけはどうにも寝つかれなくて、夜明けがくるのをぼんやりと待っていました。
その庄屋の息子の目に、ふいに白い物がうつったかと思うと、それはしだいに形を整えていき、長い髪の女がうらめしそうに立っているのがはっきりと見えてきました。
女はまず小坊主のところへ行って、白い息を吹き込みました。
次に刀屋の息子にも、同じ事をくり返しました。
(ああ、今度はおいらの番だ。おいら、死ぬのかな?)
庄屋の息子は、ブルブルと震えながら固く目を閉じていると、
コケコッコー!
外で一番どりが鳴いて、女の気配が急になくなりました。
庄屋の息子は目を開けて女のいない事を確認すると、すぐに横の二人をゆさぶり起こしました。
でもすでに、二人とも死んでいたのです。
命びろいをした庄屋の息子は、氏神(うじがみ)さまへお礼と厄払いをかねて二十一日間の願掛けをしました。
その帰り道にとても美しい女に出会った庄屋の息子は、不思議な縁を感じてその女と所帯を持ち、幸せな一年を夢のように過ごしました。
そしてなにげなく一年前の恐ろしい出来事を思い出した庄屋の息子は、髪をとかしている女房の顔を見て、はっとしました。
(今になって気づいたが、女房の顔は、あの時の女の顔にそっくりだ)
でもそれに気が付いた時には、庄屋の息子は死んでいたのです。
この日はちょうど、百物語の夜から一年目だったそうです。
おしまい
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