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10月7日の日本民話
孝行滝(こうこうだき)
長崎県の民話→ 長崎県情報
むかしむかし、山王山(さんのうざん)のふもとに、とても仲の良い猟師の親子がいました。
ある冬の日、いつものように狩りに出かけた父親は、今まで見た事もないようなまっ白いシカを見つけました。
(こいつは、高く売れるぞ)
父親は、夢中でシカのあとを追いました。
ところが滝のそばまでやってきた父親は運悪くコケの生えた岩に足をすべらせて、そのまま滝つぼの中に落ちていったのです。
その夜、いくら待っても帰って来ない父親を心配しながら、息子はいろりのそばでうとうとしていました。
すると夢の中に、白い着物を着た老人が現れたのです。
「父を、迎えに行くのじゃ。お前の父は山王山の滝つぼに落ちて、すでに死んでおる」
飛び起きた息子は、急いで山王山へと向かいました。
するとあの老人の言った通り、父親は滝つぼのそばで冷たくなっているではありませんか。
「父上・・・」
あまりの事に息子は、ただその場に立ちつくしていました。
やがて気を取りもどした息子は、神さまにお願いして父親の命を呼び戻そうと、滝つぼめがけて走って行きました。
そうして着物をぬぐと、凍りつくように冷たい滝の水にうたれながら、
「どうぞ、父をよみがえらせたまえ!」
と、一心に祈りつづけたのです。
さて、どれくらいたったでしょう。
身を切るような滝の冷たさに息子の意識が薄れかけたころ、ふと父親の方を見ると、わずかですが父親のほほに赤味がさしていたのです。
息子は父親のそばにかけよるとその体をさすりながら、けんめいに父親の名前を呼び続けました。
すると固く閉ざされていた父親のまぶたが少しづつ開いて、「ふーっ」と息を吹き返したのです。
そしていく日かたつと、父親はすっかり元通りの元気な体になりました。
こんな事があってから親子は狩りをやめて、神に感謝をしながら毎日を過ごすようになりました。
この父親が落ちた滝は、いつの間にか『孝行滝』と呼ばれるようになり、今でも清らかな水を流し続けているそうです。
おしまい
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