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4月11日の日本の昔話
畳石の一ぱい水
長野県の民話 → 長野県情報
むかしむかし、女神湖(めがみこ)の近くの道ばたに『かぎっ引き石』という、大きな石がありました。
その石の上にはいつも一匹のカッパが腰をかけていて、道を通る人がいると、
「かぎっ引きを、しねえか?」
と、呼びとめるのです。
かぎっ引きというのは、お互いの小指をかぎみたいに曲げて引っ張り合いをする力比べです。
長い旅をしてきた者の多くが、たいくつしのぎにこの誘いを受けるのですが、カッパの力は大変なもので、小指をからめたとたんに負けてしまうのです。
そして負けてしまうと有り金を全部取られたり、肝を抜かれたりするのです。
このかぎっ引きカッパのうわさを聞いた、諏訪(すわ)の殿さまが、
「旅の者を苦しめるとは、悪いカッパだ。ひとつわしがこらしめてやろう」
と、さっそく馬を出しました。
さて、殿さまの姿を見つけたカッパは、さっそく殿さまに声をかけました。
「これは殿さま、私とかぎっ引きをいたしませんか?」
それを聞いた殿さまは、ニタリと笑うと、
「よし、では始めよう」
と、言うなり、馬の上からカッパの腕をしっかりとつかんで、そのまま馬のお尻にムチを入れました。
さすがのカッパも、馬に引きずられたのでは手も足も出ません。
「と、殿さま、どうか、ごかんべんを!」
「・・・・・・」
カッパはあやまりましたが、殿さまは答えません。
カッパは、泣きそうな声で叫びました。
「ど、どうかごかんべんを! もう二度と、悪い事はしませんで、馬を止めて下さい」
「・・・・・・」
でも、殿さまは答えません。
とうとうカッパは、大声で泣きながら叫びました。
「どうか、どうか、お願いでございます! おわびのしるしに、水をわき出してみせますので!」
「・・・よし」
殿さまは、ようやく馬を止めました。
そこはちょうど、望月(もちづき)の畳石(たたみいし)というところでした。
「カッパ。約束通り、もう二度と悪さするなよ」
「はい。もう二度と悪さはしません。約束は守ります」
カッパはそう言うと、両手をついて頭を下げました。
するとカッパの手元から、みるみる清水がわき出したのです。
やがてカッパはどこかへ行ってしまいましたが、清水は止まる事なくわき出しました。
この水は『畳石の一ぱい水』と呼ばれて、それから長い間、旅行く人々ののどをうるおしたといわれています。
おしまい
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