福娘童話集 > きょうの日本民話 福娘童話集 きょうの日本民話 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
     8月11日の豆知識

366日への旅
きょうの記念日
スポーツ中継の日
きょうの誕生花
るこうそう
きょうの誕生日・出来事
1942年 中尾彬(俳優)
  8月11日の童話・昔話

福娘童話集
きょうの日本昔話
人食い婆と、おつなの頭
きょうの世界昔話
月の中のウサギ
きょうの日本民話
絵から抜け出した子ども
きょうのイソップ童話
ヘビとワシ
きょうの江戸小話
金魚
広告
 


福娘童話集 > きょうの日本民話 > 8月の日本民話 >絵から抜け出した子ども

8月11日の日本民話

絵から抜け出した子ども

絵から抜け出した子ども
兵庫県の民話兵庫県情報

♪音声配信
音声 ことのは

 むかしむかし、あるところに、子どものいない夫婦がいました。
「子どもが欲しい、子どもが欲しい」
と、思い続けて毎日仏さまに願ったところ、ようやく玉のような男の子を授かったのですが、病気になってしまい五歳になる前に死んでしまったのです。
 夫婦はとても悲しんで、毎日毎日、泣き暮らしていました。
 でも、ある日の事。
「いつまで泣いとっても、きりがない」
「そうね、あの子の絵をかきましょう」
 夫婦は子どもの姿を絵にかいて、残す事にしたのです。
 それからというもの父親は座敷に閉じこもって絵筆を持つと、食べる事も寝る事も忘れて一心に絵をかき続けました。
 やがて出来上がった絵は、子どもが遊ぶ姿をかいた、それは見事な出来映えでした。
 二人はその絵をふすま絵にして、わが子と思って朝に晩にごはんをあげたり話しかけたりしました。

 ある晩の事、父親はふっと目を覚ますと、何やら気になって子どもをかいたふすま絵を見ました。
 すると絵には子どもの姿はなくて、絵だけを切り取ったように白い跡が残っていたのです。
「絵の子どもは、どこへ行ったんや?」
 朝になって、もう一度ふすま絵を見たときは、子どもは元通り絵の中にいました。
「あれは、夢やったんかな?」
 でも、それからそんな事が何度もありました。
 そしてそれは決まって、月のきれいな晩でした。

 その頃、死んだ子と同じぐらいの年の子どものいる家に、夜中に子どもが遊びに来るといううわさがたったのです。
 何でも寝ている子どもの手を引っ張ったり、髪にさわったりして、
「ねえ、遊んでよ。ねえ、遊んでよ」
と、言うのです。
 これを聞いた夫婦は、
「きっと、うちの子や」
「そうよ。うちの子が、さみしがってるんやわ」
と、思い、ふすま絵にすずめを二羽かきたしたのです。
 けれどもやっぱり、子どもは座敷に月明かりがさし込むと、どこかへすうーっと出ていくのです。

 ある晩、子どもはいつものように出ていって、明け方近くに絵の中へ戻ろうとしました。
 その時、二羽のすずめが絵から羽をぱたぱたさせて、たたみに飛び降りてきたのです。
 喜んだ子どもはすずめと一緒に縁側から庭に降りて、夜が明けるのも忘れて遊んでいました。
 すると、
 コケコッコー!
と、一番鳥が鳴きました。
 おどろいたすずめはどこかへ行ってしまい、子どもも急いで絵の中に戻ろうとしたのですが、庭石につまずいてぞうりのはなおが切れてしまったのです。

 さて、朝になって夫婦がふすま絵を見ると、子どもは絵の中にいたものの着物は泥だらけで、ぞうりは片一方しかはいていませんでした。
 そしてもう片一方のぞうりはふすま絵のはじっこに転がっており、すずめは白く形だけが残っていました。
 この子どもはそれからも月明かりがさし込むと絵から抜け出し、朝になると顔の向きが違っていたり、切れたぞうりを手に持っていたりしたそうです。

 この不思議な絵は、一九九五年一月十七日の阪神大震災で焼けてしまうまであったそうです。

おしまい

前のページへ戻る


きょうの日本民話
ミニカレンダー
<<  8月  >>
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
福娘のサイト
366日への旅
毎日の記念日・誕生花 ・有名人の誕生日と性格判断
福娘童話集
世界と日本の童話と昔話
女の子応援サイト -さくら-
誕生日占い、お仕事紹介、おまじない、など
子どもの病気相談所
病気検索と対応方法、症状から検索するWEB問診
世界60秒巡り
国旗国歌や世界遺産など、世界の国々の豆知識